02/09/14 (Sun)
日本の貿易構造
きょうは前から気になっていた日本の貿易構造について調べてみました。ポイントは、日本の貿易収支が赤字に転じたのはいつか、その原因は何か、そして赤字は今後も続くのか、の3つです。まず、下のチャートを見るとわかるように、日本の貿易収支が赤字に転じたのは2011年で、それ以降は拡大しています。2011年は東日本大震災があった年です。では、一部の報道などで言われているように、この3年間の貿易赤字には震災後の原発停止が関係しているのでしょうか。





これを調べるため、震災が起こる前の2010年と2013年を比較してみました。下の表にあるように、この3年間で貿易収支は18.1兆円も悪化しました。輸出が3.5%しか増えていないのに対し、輸入が33.7%も増えたためです。輸入の主要品目を見ると、原油・粗油が4.8兆円(51.4%)、液化天然ガス(LNG)が3.6兆円(103.3%)増加していました。

ではやはり原発停止のせい…?と結論を急ぐ前に、この2つの品目を数量ベースで見てみると、原油・粗油は実は1.4%減少しており、LNGは25.0%の増加、つまり金額ベースの増加の4分の1程度にとどまっていました。ということは、それぞれ価格と為替の影響の方が大きかったことがわかります。





下の表は、原油・粗油とLNGについて、この3年間の輸入金額、輸入数量、価格、ドル/円の変化をまとめたものです(価格は金額、数量、ドル/円レートから逆算)。これを見ると、原油・粗油の輸入は数量ベースでは減少したものの、価格が38.0%上昇し、さらにドル/円が11.2%上昇(円は10.1%下落)したため、金額ベースで51.4%の増加につながったことがわかります。

同様にLNGも、価格が46.3%上昇し、ドル/円が11.2%上昇したことが大きく影響しました。このため、金額ベースの3.6兆円の増加のうち、数量の増加による寄与は0.9兆円にとどまりました。貿易収支全体が18.1兆円悪化したうちの0.9兆円といえば5%程度です。つまり、原発を停止しているために貿易赤字が拡大しているとは言えないようです。(ただし日本の足元を見た価格つり上げなどが多少影響している可能性はあります)





一方、対アジアの貿易黒字はこの3年間で8.4兆円も縮小し、そのうち4.7兆円は対中国の貿易赤字でした。下の表は、対中国の貿易について2010年と2013年を比べたものです。これを見るとわかるように、中国から輸入している主要5品目のうち4品目(電気機器、一般機械、原料別製品、化学製品)は、中国に輸出している主要4品目と一致します。つまり、これらの輸出が大きく減ったうえ、輸入がそれを上回る大幅な伸びで増えたのです。





下のチャートは、この主要4品目の対中国の輸出入の推移を見たものです。輸出が2007年をピークに横ばいもしくは緩やかな減少傾向にある一方、輸入はリーマンショック後の一時期を除いて2000年以降は増加傾向にあります。これは生産拠点の移転を反映した構造的な変化と考えられます。企業が生産拠点を日本に戻すことは考えにくいため、対アジアの貿易赤字は今後も継続する可能性が高そうです。





ということで、この3年間に貿易収支は18.1兆円悪化しましたが、その93%に相当する16.8兆円については、エネルギー価格上昇と円安の7.5兆円(4.8兆円+3.6兆円-0.9兆円)、LNGの輸入数量増加の0.9兆円、中国を中心とした対アジアの貿易黒字縮小の8.4兆円で説明できることがわかりました。対アジアの貿易構造は長期的なもので変化するとは考えにくいため、エネルギー価格が高止まりし、円安が続けば、今後も貿易赤字は継続する可能性が高いと考えられます。