03/14/12 (Wed)
地震が起こる確率
地震のニュースにはよく「確率」という言葉が出てきます。でも、例えば同じ首都直下地震(M7級)でも、「4年以内に70%」、「5年以内に28%」、「30年以内に70%」など、出所によってかなり大きな差があります。いったいどう解釈したらいいのでしょうか?まあ結局は「いつ起こってもおかしくないから常に気をつけましょう」というのがベストだとは思うのですが、もうちょっと理解を深めておきたいと思い、少し調べてみました。

ここでまず思い出すのは、去年の竹中平蔵さんの「(東海地震について)30年で大地震の確率は87%、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この1カ月では0.2%」という内容の、一部の間では有名な(?)ツイートです。1年の確率を 87%/30 = 2.9%、1カ月の確率を 2.9%/12 = 0.2%と、明らかに単純な割り算をした竹中さんに対し、確率なんだからそれはおかしいでしょう?というツイートやブログ記事が相次いで結構盛り上がりました。

確かに、一見するとおかしいようにも聞こえます。例えば、サイコロを30回ふって最初に1が出る確率を考えてみます。答えは1/6 = 16.67%ですが、竹中さんの計算だと、30回ふって1が1回以上出る確率を単純に30で割るので、(1-(5/6)^30)/30 = 3.32%になってしまいます。

で、先ほどの地震の確率の計算で竹中さんが間違っているとする人たちの多くは、正しい答えとして、30年間に1度も地震が発生しない確率は1-0.87 = 13%で、それを1年になおすと(0.13)^(1/30) = 93.42%だから、1年間に地震が発生する確率は1-0.9342 = 6.57%、同様に1カ月では1-(0.13)^(1/(30*12)) = 0.56%になる、と主張しています。

…でも、地震の確率とサイコロの確率を同じように計算しちゃっていいの?という疑問がわきます。だって、累乗するということは、その期間に地震が複数回発生する可能性を想定していることになるからです。また、サイコロの場合は1回ふるごとに新たにリセットされる、つまり前回出た数字と次に出る数字との間に相関はありませんが、地震は過去と未来が関係している連続的な現象と考えるのが自然です。

そこで、もともとの「30年で87%」という予測を出した地震調査研究推進本部(政府の特別機関)の計算方法を調べてみました。(首都直下地震(M7級)の確率を 「30年以内に70%」と試算しているところです) すると、大まかにいえば、地震の活動履歴が明らかな場合は「BPT分布」、過去の最新活動時期が不明の場合は「ポアソン過程」に基づく、ということがわかりました。

周期的に発生する地震(東海地震のような「海溝型(プレート境界型)」がこれに相当)の場合、地震は1周期につき1回しか起こらないと想定され、その活動間隔は「BPT分布」に従うと考えられているそうです。BPT分布をグラフにすると下のようになります。





これを見るとわかるように、ある時点からx年以内に地震が発生する確率は「濃い水色の面積 / (濃い水色の面積 + 薄い水色の面積)」になります。サイコロとは明らかに違いますね。サイコロの場合はx軸を1、2、3、…とピンポイントできますが、地震のx軸を何月何日何時何秒と特定してしまうとその確率はほとんどの場合は0になるので、一定の期間(範囲)で表しています。

地震はあくまで1周期に1回と考えるため、地震が起こらない期間が長くなるほど、最新活動からの経過年数も長くなり、地震が発生する確率は高まります。つまり、「現時点からx年以内に地震が発生する確率 < 将来のある時点からx年以内に地震が発生する確率」ということになります。

「30年で87%」とされる東海地震の場合は、まさにこの確率が非常に高まっている状態にあります。海溝型で地震の周期は100~150年、最新活動は1854年だったので、経過年数は2012-1854 = 158年となり、すでに周期を過ぎていて、いつ起きてもおかしくない時点に来ているからです。

一方、最新活動時期や周期が不明で、BPT分布を用いるだけの信頼度がないもの(M7級首都直下地震はこれに相当)については、「ポアソン過程」が適用されるそうです。ポアソン過程をグラフにすると下のようになります。





ポアソン過程の計算に使われるのは、「平均的に何年間隔で地震が発生するか」という情報のみです。x年以内に地震が発生する確率は、どの時点においても一定と考えます。また、ある期間内に地震が複数回起こる可能性も考慮していることになります。

これは、先ほどの竹中さん否定派に多数見られた計算に似ていますね。同じ確率を何度も掛けていくことで、地震が複数回発生する可能性を考えています。例えば否定派の毎年6.57%に基づくと、30年間で2回以上地震が来る可能性を仮定してしまっています。ところが東海地震では今周期に1回だけを想定しているので、1回起これば残りの期間はもう起こりません。

今後30年間に地震は1回で、それがどの時点に起きてもおかしくないのであれば、87%を30で割って概算値を出すのは大騒ぎになるほど的外れではない、ということになります。

…そんなこんなで今まで知らなかった地震の確率の計算について見てきましたが、最後に、やっぱりこれが一番当たってるなーと思うロバート・ゲラー教授のコメントを載せておきます。(以下、「東大発表の「首都直下地震4年以内に70%」に東大内から異論」から抜粋)

実は、この「4年で70%」という「試算」は、地震研の酒井慎一准教授らの研究グループが昨年9月、地震研談話会(所内ゼミナール)で発表したもので、当時はほとんど話題にならなかった。ところが今年1月下旬、読売新聞がメンバーのひとりである平田直教授のコメント入りで1面で報じたとたん、新聞各紙、テレビ、週刊誌が競うように飛びついた。

私に言わせれば、この試算や弾き出された数値には何の普遍性もない。その1つの証拠に京大の研究者が少し違うデータを使って同様の手法で試算し、「5年以内、28%」としている。同じ手法に拠りながら、数値にこれだけ大きな誤差やバラツキが出ること自体、試算に信憑性がないことを強く示唆している。

平田教授自身、一部週刊誌の取材に「僕のヤマ勘ですよ」と答えたと報じられ、身内の地震研でさえホームページに「このサイトに掲載されたからといって、地震研究所の見解となるわけではまったくありません」などと見放すようなコメントを記している。

私は試算に信憑性がないと言ったが、だからといってM7級の地震が首都圏を直撃するリスクがないとは思っていない。東日本大震災の翌日、長野と新潟の県境でM6.7の地震が発生した。あの日、あの程度の地震が首都圏で発生したとしても何の不思議もなかった。発生確率の数値とは無関係に、日本のどの地域においても、いつでも大きな地震は起こり得るのだ。