03/22/20 (Sun)
峰宗太郎先生による説明 — 新型コロナウイルス その2
YouTubeにとてもいいインタビュー動画を見つけたのでまとめてみました。主に回答部分の抜粋で、読みやすくするため文体の変更、多少の修正・加筆あり。

【出所】「新型コロナウイルスについて専門家に質問しました(前編)・(後編)」

【話し手】峰 宗太郎(病理医・薬剤師・研究者。米国国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)アレルギー感染症研究所 博士研究員。ウイルス学・免疫学の研究をしている)

【聞き手】堀江貴文


Q:既存のコロナウイルスとどこが違うのか。

A:普通の風邪として知られるコロナウイルスは4種類。それ以外に、もう少し重い病気を引き起こすものとしてSARSとMERSの2種類がある。新型コロナウイルスはSARSに近い系統で遺伝子の情報が非常によく似ている。風邪のコロナウイルスとは遺伝子的な距離は結構離れている。

まず表面に出ているタンパク質の種類がSARSによく似て、人間の喉や肺との親和性が高い。なので細胞に入りやすい。またビルレンス(virulence、病毒性)に関しても、風邪は上気道だけに入ることが多く下気道つまり肺にはあまり入らないが、新型コロナウイルスはかなり肺でも増殖することがわかっており、ウイルスそのものが持っている毒性がやや高い。

性質としてはSARSと風邪のウイルスの間くらい、つまり広がりやすさが風邪やインフルエンザに近く、基本再生産数が高い一方、SARSのような結構な病毒性があるというコンビネーション。


Q:子どもはあまり重症化しないのに高齢者は重症化しやすいのはなぜか。

A:この理由は現段階では全くわかっていない。


Q:子どもと高齢者の症状の違いで推測できることはあるか。

A:免疫の状態が関係している可能性はある。子どもの方がかかりやすい病気もあれば大人の方がかかりやすい病気もあり、一番大きい違いは免疫の状態。体とウイルスの反応性の違いに影響されることがあるので、新型コロナウイルスの場合も免疫の反応の仕方が違う可能性がある。


Q:治療薬は作られているのか。

A:新型コロナウイルスに対する治療薬の試験は始まっているが、ゼロから作るのではなく、多くはスイッチと言って、いままでに開発されている薬の用途を変えて効くかどうか試している。

SARSのときもそうだったが、ウイルスというのは共通で持っている仕組みがあり、自分自身を増やす部品が似ている。HIVの薬など、すでに開発されていた薬が効くかというような試験はSARSのときもしていた。しかしSARSは2003年に収まったので実は人体実験はできていない。MERSの方はいまだに症例が出ているので少しそういう試験がされていた。

そこでも知られていた多少効果のあるような薬を今回は積極的に取り入れて、サイエンスの最先端である三次元の構造解析をし、新型コロナウイルス自身を増やす部品であるタンパク質の形はすぐに決められた。薬がどういう風にその酵素に当てはまるか、かなり早い段階でコンピューターシミュレーションでわかった。

そこで出てきた候補を試験管の中で実験して、これが効きそうだという候補もすぐにリスト化された。これは中国の仕事が速かった。そういったものを使っていま中国で臨床試験がどんどん進んでいる。


Q:インフルエンザワクチンが開発された頃とは状況が違うということか。

A:そうだ。まずはウイルス自体の情報、設計図であるゲノムを読み込む速度がこの10年のテクノロジーの進化でそれこそ100倍、1000倍になっている。なおかつSARSと似ていたので、SARSの構造というのはいろいろな人がすでに決めていたが、シミュレーションの技術も上がっているので、それの類推がすぐに出た。


Q:湖北省では致死率がすごく高かったが中国全体で見ると致死率はそれほど高くない。重症化した患者さんを人工呼吸器などで救えると致死率は上がらないのか。

A:私自身も治療する医師ではないので、又聞きだったり情報を集めているが、多くは重症化した場合でも行えるのは肺炎に対する支持療法。

基本的に、呼吸が苦しくなった場合はまず酸素投与、それが無理なら陽圧をかけて肺を膨らませる、そして気管挿管をして人工呼吸器、それでも効かない場合は体外肺といって人工心肺の心臓のないもので肺の呼吸器を機械に置き換えたECMO(エクモ)というものを使うが、そういったものをどこまで活用できるかは医療機関や国によって差がある。

日本の場合でもECMOを使える病院は、もちろん普段はたくさんあるが、感染症という状況でこのECMOを回せる医師と看護師という人材、機械、それから感染症対応のICUの部屋、そういったもののリソースを考えると、武漢という大都市といえども決して多くはなかったと考えられる。


Q:日本全体でそういう病院はどれくらいあるのか。

A:数としては私もわからないが、今回、都内でECMOをすぐに回せた病院はいくつか聞いてると大学病院で2-3カ所。もちろん各医療機関ですぐにできるようにキャパシティを上げる努力はするが、一朝一夕に人が増えるわけではない。


Q:インフルエンザ肺炎で肺が全く機能しなくなった状況で人工心肺を使うことはあったのか。

A:もちろんかなりの重症になった人への適用はある。ただこのECMOの適用はすごく難しく、何とか人工呼吸器までで頑張ろうとすることが多い。本当の緊急事態、最重症の方に使うものなので。そういう方が同時に多発するとやはり医療のキャパは一気に超える。武漢などではそういう状況があったのではないかと想像できる。


Q:インフルエンザで亡くなられている方はどんな患者さんが多いのか。

A:やはり高齢者の方が多い。基本、高齢者は余力といって残っているキャパシティが少ないので、肺炎になってしまうと、若い人であれば何とか人工呼吸に行かずに持つようなところが一気に人工呼吸器に入ってしまう。

人工呼吸器というのはあくまで一過性に呼吸を助けているだけなので、自分の体が改善してくれなければならない。ところが、「持ち上がらない」とわれわれはよく言ううが、肺の状態が改善せずにそのまま人工呼吸に依存して二次感染を起こして亡くなってしまう。

二次感染として、違う菌が入ってしまうことがある。人工呼吸器は外から無理やり空気を押し込んでいるので、ばい菌も押し込まれる。そうすると肺炎が被さってしまい、インフルエンザ肺炎に加えて細菌性肺炎も起こすことがよくある。また、全身状態が悪くなり点滴だけになると免疫状態が一気に悪くなるので、全身感染症を起こしたり多臓器不全になる。


Q:高齢の方が新型コロナウイルスで亡くなられている状況にすごく似ているのか。

A:新型コロナウイルスはその割合が若干大きいと思っていただければいい。


Q:医療崩壊を起こしやすいのか。

A:新型コロナウイルスはインフルエンザと同じぐらいの感染力があると考えられ、なおかつおそらく重症化率がインフルエンザよりわずかに高い。そうすると、同じくらい広がってしまうと、医療に与える重症化の割合も当然上がるので、キャパシティに大きな影響を与えかねない。


Q:新型コロナウイルスに感染した人が完治してまた再感染することはあるのか。

A:再感染よりも「再燃」を疑っている。再感染というのは1度体からウイルスが消えてしまった後にまた違う人からウイルスが飛んでくるという状況。そうではなく、1度ウイルス量が免疫によってかなり抑え込まれて体の中でどーんと減る、そして症状も消える。そのときにPCRなどの検査をするとウイルス量が少ないので「偽陰性」になる。

ところが後からもう1度残っていたウイルスが増え始めて再燃するというケースは起こり得る。風邪のぶり返しや胃腸炎の二峰性などと同じ。


Q:今後、新型コロナウイルスのワクチンができて定期接種できるようになるのか。

A:実はコロナウイルスもインフルエンザウイルスもゲノム情報がRNAに書き込まれている。人間のDNAとは違い、RNAというのはエラーが起こりやすいので変異はすごくしやすい。


Q:DNAは二重らせんだが、RNAは一重らせんのため、エラー訂正がされないからか。

A:そうだ。ウイルスの表面に突起が出ている、その突起の部分がワクチンの標的になる。つまり、ワクチンはそこを攻撃することで細胞に入らないようにする。そこがどのくらい変異しやすいかというのが非常に重要になる。

インフルエンザの場合は、実はその突起が2種類あり、片方がワクチンのターゲットなのだが、そこがホットスポットと言って変異しやすい部位として知られている。ヘッドと言って突起には頭があり、そこに対するワクチンがインフルエンザでは用いられているが、そこはすごい勢いで変異するのでワクチンが当たらないことが多い。なのでいま、ストーク(stalk)と言って茎の部分に対するワクチンの開発が世界中で進んでいて、そうするとあまり変異がないだろうと言われている。

それに対してコロナウイルスの突起というのは、実は変異はインフルエンザよりはましと言われている。なのでワクチンを1度開発すると、SARSの場合は変異が少なかったことがわかっており、インフルエンザよりは有効になる可能性がある。


Q:医療機関に大量に人が押し寄せて医療崩壊してしまうリスクは大きいのか。

A:重症者が増えるとキャパシティは一気になくなる。軽症な方も、いまのところ指定感染症なので原則入院になる。もちろんキャパがなくなってくれば自宅待機ができるようにという厚生労働省からの通知も出ているが、感染が広がればある一定の割合で、重症化は10-20%と言われているが、容易に医療のキャパはなくなる。


Q:SARSコロナウイルスよりも感染力が強いというのは何が原因で感染力が強くなっているのか。

A:1つはウイルスそのものの特性。われわれの考えている感染経路は2つあり、飛沫感染と接触感染。飛沫に関しては、飛沫に出やすい性質をウイルスが持っているかが重要。

新型コロナウイルスは、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine:NEJM)という、われわれがNEJMと呼ぶ一番有名な医学雑誌にも出ていたが、鼻水にすごく多くウイルスが出る。インフルエンザよりもはるかに多いので、くしゃみをすると鼻水は吹き飛ぶが、含まれているウイルス数がそもそも多い。これは結構まずいこと。くしゃみやおしゃべりなど、飛沫を飛ばすことで容易にウイルスが空気中にばらまかれる。これは1つ感染力の強さになる。

もう1つは、それを触ると手に着く。それで吊革やドアノブを触る、ビュッフェ形式の食事でトングをつかむ、次の人が触る、そして鼻を触って感染していく。そのように飛沫に出やすい性質がある上気道感染症のウイルスというのは感染力が強いことが多い。


Q:なぜウイルス感染が冬場に流行するのか。

A:これは本当にわかっていない。プロの間でも意見が分かれている。1つは、ウイルス自体が、乾燥するか湿り気が多いかによって保存性が変わるとも言われているが、大事なのは乾燥すると喉の状態が良くなくなる。なので受け手の免疫の力が下がっているのではないかという話もある。

もう1つ有力な説は、寒いとやはり室内でのイベントや室内での生活が増える。なので結局、人間の行動が変わって流行りやすさが変わるのではないかという意見もある。というのは、インフルエンザは東南アジアでは通年で流行っている。夏でも。極地に近い半球だと冬に流行るので人間の行動かもしれないとは言われている。


Q:新型コロナウイルス感染症対策はいつまで続くのか。

A:いま日本政府が専門家会議のアドバイスを受けてやっているのはピークを抑えるという方法。ピークがあまりにも急激に上がってしまうと医療キャパシティを超えてしまう。

結局のところ1番の目標というのは死亡率を下げるということになる。死亡率というのは致死率とは違う。致死率というのは基本的にかかった人のうち何人が亡くなるか。死亡率というのは分母の部分が人口全体になる。なので社会としてどれだけ人を死なさないかということを目標にするならば、医療のキャパを保ったまま少しでも流行を遅らせることによってちゃんと治療をしていくことで救おうという戦略になる。

ピークが潰れると基本的にはクラスターの発生などの数も下げることになるが、数理上は急激に上がっていたものを伸ばすと後ろがだらだら長くなる。なので対策をすればするほどいつ収束するかがわからなくなる。そもそも収束の定義がしにくくなってくる。

比較するならばSARSではなくて2009年の新型インフルエンザだろう。2003年のSARSはピークが急峻で中国内で収まって完全終息し、症例がゼロになった。だが2009年の新型インフルエンザの場合は実はピークを押さえたことでだらだら続き、流行はいまも続いている。

今回もそれに近いシナリオが1番考えられるので、収束というのはウイルス学的に抑え込んだとか症例がなくなったという臨床的なことよりは、社会がどこまでこれを受容したかということと、治療法が開発されたりワクチンが出てきて恐れるに足りなくなったときという2つの可能性になる。そうすると社会が受容するのが先なのか、ワクチンだと多分半年以上、治療法だと今月多くの試験結果が出てくると思うが、そういうことで報道などが落ち着いてきたときに初めて収束していくと考えられる。


Q:治療法が先に出てくる、その後ワクチンが開発される、その間ぐらいで社会が許容するということか。

A:そう予想している。


Q:季節性インフルエンザの社会的許容と似たようなシチュエーションになる可能性があるのか。

A:そうだ。初期の想定ではもちろん完全に封じ込めたSARSを狙ったわけだが、パンデミックになってしまった、パンデミックというのはただの状況評価だが、ここまで世界に広がってしまい、これを症例数ゼロまで持っていくというシナリオはやはり考え難い。

なので現実論としては、各国ごとに終結宣言を出すかWHOが出すかもしくは2009年のときのようにだらだらとグダグダで終わっていくかになる。


Q:新型インフルエンザのときはどのくらいグダグダが続いたか。

A:あれは国によっては1年以上続き、第2波になってしまったところもある。第2波というのは、1度外に出たもののまた流入する。つまり症例が追えなくなった。症例が追えなくなると、市中感染だ何だというのではなく、広く存在するという状況になってしまう。


Q:新型インフルエンザと状況はあまり変わらないのにSNSの発達で騒ぎ方が異常ではないのか。

A:WHOも今回、インフォデミック(infodemic)という言葉を使っていて、「情報が感染している」と強調している。実はWHOは1月の時点で新型コロナウイルスに関する公式のサイトを作っており、デマを潰すようなページも早々に作っていた。また、報道側に要請する情報をどんどん出したりと、やはり状況は全然違う。


Q:ガイドラインとして感染を防ぐためにどんなことに気を付けて行動すべきか。

A:これは国の専門家会議が出している発表のなかにヒントがある。まずは人が集まるということ、それから声を出したり歌ったりという飛沫を飛ばすような環境にあること、そしてもう1つ換気が悪いこと。基本的に人が増えると人と人との距離(distance)も狭くなるので間接的にリスクになる。この3つを主に踏まえて考える。

例えば小さい会場で換気が悪く、200人許容のところに200人入るライブなどは結構危険。一方、満員電車に関してあまり激しく危険だと言っていないのは、中で歌っていない、飛沫が飛んでいないから。そう考えるとその3つが合わされば合わさるほどリスクが上がると考えられる。そこを避けられればある程度は実施可能だと捉えていく方がいい。

例えば公園で散歩する、遊ぶ、戦隊ものを見るなどは、換気はいい。声援をたくさん飛ばさなければ飛沫も飛ばない。


Q:東京ディズニーランドや宝塚の自粛制限のケースはどうなのか。

A:ディズニーランドであれば、みなさんがすれ違う程度であれば飛沫感染のリスクは非常に低い。ただし接触感染はリスクがある場所もある可能性がある。ジェットコースターで手すりを持つ場所など、共通のものなど。例えばジムで広がったのはおそらくジムの機械を触ったことがある。そういうポイントの対策ができていれば決してリスクは高くはない。

宝塚に関しても、あそこは非常に落ち着いていて誰も声援を出したりしないので、症状のある方が入ってこなければかなりリスクは低いと思う。くしゃみ・咳が止まらない方や入場するときに熱を測るなど、症状のある人をとにかく入れないこと。そうすればリスクはかなり低く抑えられる。


Q:子ども・高齢者など年齢的な要素は感染に関連しているのか。

A:重症化には関連しているが、感染のしやすさではどの年代でもほぼ同じというレポートが出ている。なので感染した際のリスクを考えるのであれば高齢者は気を付けなければいけないが、感染のしやすさは子どもからお年寄りまでほぼ一緒だと思っていい。


Q:渡航制限に意味はあるのか。

A:これはプロの間でも若干意見が分かれている。武漢と湖北省をシャットダウンしたことでかなり中国から他への広がりのピークは抑えられたという論文は多い。だが各国の水際対策としての渡航対策は、あくまでも流行の流入を抑えてピークを抑えるという効果しかないことはわかっている。完全にシャットアウトできるものではないので。

そうすると、先ほどのピークコントロールの話になる。医療のキャパシティがどうかと。そういう意味では、流入を遅くすることによって医療体制を整える暇がある国にとっては有効だといえる。


Q:例えば米国では国内でかなり流行しているにもかかわらず欧州からの入国を30日間停止するとしている。これに意味はあるのか。

A:科学的に意味があるかよりも、やはり医療のキャパを上げておくという宣言にもなる。そこには政治も入っていると思う。


Q:いまは恐怖が先行していて、みなさん過剰に意味のない対策をしているので、それをすごく憂慮している。峰先生のおかげで新型コロナウイルスに対する認識がすごくクリアになり、非常に有意義でした。ありがとうございました。

A:ありがとうございます。