05/19/11 (Thu)
チェルノブイリの経験から学ぶ
歴史に学ぼう、ということで、ちょっと真面目にチェルノブイリ事故について調べてみました。まずは、現段階の福島との比較から。(こんなシンプルなチャートですが、チェルノブイリのデイリーベースの公式推定値を探すのは意外と大変でした…)





福島の数値には、先月12日に原子力安全委員会が発表した4月5日時点の推定値を使いました。(ただしこれは大気中への放出量のみで、海洋への放出や、敷地内の表層・土壌中への沈着は含まれていない点に注意) 1日当たりの放出量がわからないので、最初は仕方なく単純平均していましたが、その後この記事この記事を見つけたので、その内容(3月14日までは5万テラベクレル未満、大量放出があった15日の時点で19万テラベクレルに到達、4月上旬は1日当たり154テラベクレル)に基づいて修正しました。これを見ると、放出の規模、パターン、期間などの違いが感覚的につかめると思います。

ここで使われている「EBq(エクサベクレル)」については、下のような表を作ってみたので、参考にしてください。10の18乗ということで、普通は「1E+18」みたいに出てくるのですが、あえて数値表示にしてみました。(福島の推定放出量は「63万テラベクレル」と報道されていましたが、テラベクレルの1000倍がペタベクレルなので、これは630ペタベクレル、もしくは0.63エクサベクレルと同じです)





というわけで、チェルノブイリの放出量はとてつもなく大きかったものの、11日目からは激減し、今に至ります。一方、福島は、最初の25日間に気体として出た放出量はチェルノブイリより少ないとはいえ、依然として現在進行中であること(というかただただ悪化中)、かつ複数の原子炉がメルトダウンに至っており、このままではいずれ地面の下や海に大量の高濃度汚染水が漏れ出し、広い範囲で農作物や海産物が汚染される可能性が高まっています。

イメージとしては、チェルノブイリが「空から一気に大量に降った」のに対し、福島は空からに加えて、「本格的な汚染がこれから土壌や地下水脈を通じてじわじわと広がる」のではないかと今の時点では考えています。

斜め読みしていた "Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation: Twenty Years of Experience" にとても有益な情報がたくさんあったので、みなさんの参考になればと思い、ここに書いておきます。

一般の人が被曝するメカニズムは次の4つ。

(a) 放射能雲の通過に伴う外部被曝
(b) 放射能雲が通過している時の呼吸・再浮遊物の吸入による内部被曝
(c) 土・その他の表面に堆積した放射性核種による外部被曝
(d) 汚染された食品・水の摂取による内部被曝

例外を除くと、より重要なのは下の2つ。つまり、気をつけるべきポイントは「土・その他の表面」と「食品・水」。

被曝の程度は大幅に軽減することができる。公式な措置としては、避難や移住、汚染食品の供給停止、汚染土の除去(これに関しては郡山市が頑張っていますよね)、農地の改良、代替食品、野生鳥獣の摂取禁止などがある。非公式な措置には、汚染されていると判断した食品を個人的に避けることも含まれる。

長期にわたって田舎に住む人々の内部被曝の程度には、土質が大きく影響する。主な土質には3つある。

(a) 黒色土、もしくは黒土層
(b) 酸性土壌
(c) 泥炭土

黒色土の場合、総被曝量(内部被曝と外部被曝の合計)に対する内部被曝の割合は、10%を超えなかった。一方、泥炭土の地域では、セシウム137による内部被曝が外部被曝を上回った。

1986年~2000年の期間、黒色土の都市の累積被曝線量が2mSvだったのに対し、酸性砂質土壌の村では最大300mSvとなった。


[ 都市部 ]
都市部で放射性核種に汚染されるのは、芝生、公園、街路、道路、広場、屋根、壁など、開放された表面。乾燥した状態では、木、茂み、芝生、屋根がより汚染される。湿った状態では、土、芝生など、水平な表面が最も汚染される。特に家の周りには高い濃度のセシウム137が見つかる。これは屋根にたまっていたものが雨で地面に移動するため。

人が住む・集まるエリアでは、風や雨のほか、交通、街路の洗浄・清掃といった人々の活動により、放射性物質は格段に減っていく。

これらのプロセスを経ると、次は下水道や汚泥貯留槽が汚染される。これが二次汚染。(今月12日、板橋区、江東区、大田区の下水汚泥から放射性物質が検出されたとの報道があったところです)

年月を経て、汚染地域の大半の空間放射線量率が通常レベルに戻っても、主に庭、家庭菜園、公園といった、未かく乱土壌の線量率は、高水準にとどまる。

都市部の住民は、同程度に汚染された田舎の住民よりも、1.5分の1~2分の1の割合で外部被曝が少なかった。この理由には、都市部のビルの方が遮蔽効果が高いこと、職業的習慣の違い(オフィスにいる時間が長いなど)が含まれる。また、都市部の住民は、田舎の住民ほど地元の農産物に依存していないこともある。

実効被曝線量(甲状腺線量を除く)が平均よりも2~3倍高かったのは、田舎の平屋建てに住み、ジビエやキノコ、ベリー類といった野生の食べ物を多く摂取していた人々だった。(平屋建てということは、やはり地表に近い方が被曝しやすいということか)

ちなみに、同じ地域に住んでいても、被曝線量は常に人によって大きく異なる。被曝線量が平均の2倍以上となる人々は、通常、事前に特定することができる。外部被曝においては、それが仕事であれ娯楽であれ、屋外で長時間過ごす人である。遮蔽効果の低い建物に住んでいる、もしくは働いている人も、そのグループに含まれるかもしれない。


[ 農業地域 ]
初期の段階では主に、農作物やそれを食べる動物の表面に放射性核種が直接堆積することで汚染される。ヨウ素131の半減期が短いため(8日間)、最も心配なのは最初の2カ月間に限定される。

ヨウ素131は高い割合で牛乳に取り込まれ、特に牛乳を飲む子どもの甲状腺線量を高めることにつながった。

さまざまな農作物が汚染されたが、特に緑色葉野菜は、堆積レベルや生育期の段階に応じて、汚染の度合いが異なる。

作物の表面への直接的な堆積が最も心配されるのは、最初の2カ月間。

次の段階では、農作物が土から根を通して放射性核種を吸い上げるようになる。これは強い時間依存性を示す。最も大きな問題になるのはセシウム137とセシウム134(セシウム134が減衰した後はセシウム137が中心となる)。

天候、物理的減衰、土柱への移動、土壌における生物学的利用能の低下などにより、特に最初の数年間は、放射性核種の野菜や動物への移動は激減する。ただし過去10年間はほとんど減衰しておらず、長期的な実効半減期を正確に数値化するのは難しい。

初期段階を過ぎると、食料品のセシウム濃度は、蓄積レベルだけでなく、土壌の種類、管理方法、生態系の種類にも影響を受ける。問題が大きく、かつ長引くのは、耕されたり肥料を与えられていない、改良されていない草を動物が食べているような、高有機質の土を使っているケース。特に、個人で乳牛を所有している、田舎の自作農への影響が大きかった。

長期的には、肉や牛乳、そして野菜(肉や牛乳よりは影響が小さい)に含まれるセシウム137が引き続き最も重大な内部被曝要因であり、それは今後も数十年間にわたって影響し続ける。

対策: 初期段階の措置として最も効果的だったのは、動物の餌から汚染草を排除すること、そして牛乳の摂取を拒否することだった。(汚染の度合いが異なるとはいえ、日本はこれと逆のことをしています) また、土壌処理と耕作が非常に有効かつ重要。


[ 森林地域 ]
森林や山岳地域の野菜や動物へのセシウム137の影響は、特に大きかった。これは、森林の生態系においてはセシウムが持続的にリサイクルされるため。

特に、キノコ、ベリー類、ジビエ(野生鳥獣)には、高い濃度のセシウム137が検出された。これらは今なお高い水準にとどまっている。こうした状態は今後も数十年間続くことが予想される。(北極や亜北極帯では、「地衣類(菌類と藻類)⇒トナカイの肉⇒人」という経路の汚染がみられた)

材木や関連製品の利用による一般市民への影響はわずかだった。ただし木灰には高い濃度のセシウム137が含まれている可能性がある。

対策: 森林で行われるさまざまな活動を禁止する。


[ 水域 ]
放射性核種は地表水システムを広範囲に汚染した。初めは川や湖の表面に直接たまり、数週間を過ぎると貯水槽から飲料水へと移動する。

水塊への汚染は、希薄化、物理的減衰、土壌の吸収により、数週間で急速に減る。

湖や貯水槽の場合は、浮遊していた放射性物質が河床堆積物となる。これは、水中の放射能濃度を抑制するうえで重要な役割を果たす。

河床堆積物は長期にわたって放射性核種の掃きだめとなる。

魚はヨウ素をすぐに取り込むものの、主に物理的減衰により、濃度は急速に低下する。

最も汚染された地域や、遠く離れた一部の地域の湖では、水中食物連鎖におけるセシウムの生物蓄積を通して、魚が高濃度に汚染された。

ストロンチウム90については、放出量が少なかったことや、生物蓄積の程度が低いこと、特に、食べられる身の部分よりも骨に蓄積することにより、セシウムと比べて人への影響は大きくなかった。

長期的には、半減期が長いセシウム137やストロンチウム90が汚染土から洗い流されたり、河床堆積物から移動することにより、(はるかに低い水準ではあるものの)二次汚染が現在まで続いている。

高有機質な土壌(泥炭土)にたまった水は、主に鉱質土壌と比べて、はるかに大量のセシウムを地表水に放出した。現在は地表水の放射能濃度は低いため、かんがいに問題があるとはみられていない。

河床堆積物となった放射性物質は、陸地にたまった同種の物質よりも、風化率がはるかに低かった。

半減期がほぼ同じセシウム137とストロンチウム90は、現在、川や湖、貯水池の魚では濃度が低くなっているものの、最も高濃度に汚染されていたのは、無機栄養素が乏しく、水の流入も流出も限定されている湖(「閉」湖)だった。

チェルノブイリは海から離れていたため、海水の放射能濃度は淡水よりもはるかに低かった。これに加えて、海洋生物相におけるセシウムの生物蓄積の低さから、海産魚の放射能濃度は問題とはならなかった。

対策: 放射性核種が汚染土から地表水に移動するのを防ぐため、さまざまな措置が講じられたものの、これらは全般的に効果がなく、高コストであるうえ、作業員が比較的高いリスクにさらされる結果となった。(日本では海の汚染が心配されますが、25年経った今は何か有効な手段があるのでしょうか?アレバKURIONの技術で足りるのだろうか…)

最も有効だったのは、早い時期に飲料水の汲み上げを制限し、代替供給に変えたこと。淡水魚の消費も制限されたが、こうした措置は必ずしも順守されなかった。