10/29/10 (Fri)
ドルと株式市場の関係
経済ニュースを見ていると、「米株式市場が上昇し、ドルは下落した」とか、その逆の「米株式市場が下落し、ドルは上昇した」というコメントをよく聞きます。要するに、米株式市場とドルは逆に動いた、ということです。

なぜ逆なのか?に対する一般的な説明として、米株式市場の上昇はリスクをとる動きの活発化(=リスク選好度の上昇)を意味し、そういう時はより大きなリターン(=より大きなリスク)を求めて海外市場にも資金が流れるため、結果的にドルが下落する、というのがあります。

でも、前はそんなことなかったなあ…という印象。株が強く、ドルも強い時代があったからです。そこで、そういう逆の関係が本当にあるのかどうか確かめようと思い、Y=ドル指数のリターン、X=S&P 500のリターンとして、回帰分析をしてみました。(ドル指数とは、米主要貿易相手国の通貨に対するそれぞれの動きを貿易加重平均したものです)





うーん…このプロットを見る限り、ドル指数とS&P 500との間に明確な関係はありません。事実、相関係数もわずか-0.126で、少なくともこの期間(1995年~2010年10月)には、相関関係はなかったということになります。ただ、散らばり方は若干右下に傾いていて、ドル指数の予測値の傾きも-0.029とわずかながらマイナスでした。

次に、同じ期間のドル指数とS&P 500の推移を比べてみました。





こちらの方が直感的にわかりやすい形を描いていました。つまり、ドル指数とS&P 500は途中までは同じ方向に動いていたのに、2001年頃を境に、逆の方向に動くことが多くなったように見えます。この期間全体の相関係数が-0.126と小さかったのは、こうした異なる動きが混ざっていたためだと思われます。

それならば、それぞれの年から現在までの期間の相関係数を別々に計算してみたらどうなるでしょうか。





なるほど。これを見ると、ドル指数とS&P 500の相関係数はいつもマイナスで、1995年までさかのぼるとほとんど意味がないほど小さい数字だったのが、年とともに徐々に大きくなり、ここ1~2年ではそれに拍車がかかっていることがわかります。直近では-0.556となっていますが、これだけ大きくなってくると、直感的に逆向きの関係があると感じるようにもなりますね。

それにしても、なんでドルはこんなことになってしまったのでしょう。それはやはり、景気の低迷が続いて超低金利が定着し、あたかも調達通貨のような位置づけになってしまったからだと考えられます。

そこで、ドル指数とS&P 500の相関係数と、FF金利(米国の政策金利)の誘導目標とを比べてみました。





今回のような大幅な金利引き下げは、2001年~2003年にもありました。でも、その時のドルとS&P 500の相関係数は非常に小さく、両者の間には特に何の関係もありませんでした。ところが、今回の利下げにおいては途中からネガティブな相関が定着し、徐々に拡大しています。これにはもちろん、量的緩和が大きく影響していますが、その結果、ドルの在り方が根本的に変化したことを表しているという意味で、すごく重要だと思います。