12/05/2005
はじめに


NYに住む私が初めてデジカメを手にしたのは、 2001年12月のことでした。その3カ月前にワールド・トレード・センターのテロがあり、長年勤めたオフィスの真横がぽっかりと消え去り、ショックと悲しみで呆然としていた時期でした。

ずっと証券業界で仕事をしてきた私は、どこで何をしていても常に頭の中はマーケットのことでいっぱい、という生活でした。ストリートを歩いていても、車に乗っていても、金利がどうなるか、株価がどうなるか、為替がどうなるか…そんな思考回路で過ごしていて、周りの景色など気にとめたこともありませんでした。

しかもそれに加えて、住民特有の(?)「観光地っぽい場所はダサイ」的考えがあり、ローカルが行くところに好んで足を運ぶ反面、エンパイア・ステート、クライスラー、ロックフェラー・センターといった、いわゆる観光名所には「風景としての興味」など全く持っていませんでした。実のところ、住民にとってのNYとはあくまで「生活の場」であって、「観光地」ではないのです。

ところが写真を撮るようになって初めて、エンパイアってライトの色が変わるんだ、クライスラーってあんなにきれいだったんだ、 NYってこんなに面白い被写体だらけだったんだ、などと日本のNYファンの方なら当たり前(?)のようなことに気づき始め、全てを新鮮に感じるようになりました。と同時に、それまでは視界に入っていながら意識の中まで到達していなかったNYの街並みを、じっくりと楽しみながら観察するようになりました。

その後はとにかく写真を撮りまくり、撮った写真をこのサイトに載せまくり、撮っては載せ、撮っては載せ、撮っては載せ…とハマっていったのです。ここに私の写真を見に来てくださる方達がいらっしゃらなかったら、こんなにハマることはなかったと断言出来ます。年月を経て少しずつマシ(?)になっていった私の写真は、ここ『CRYSTAL』とともに成長してきたと言えます。

ここで「よくある質問」に話を移しますが、一番多いのは(というかそれが唯一かも)「あきさん、カメラは何をお使いですか」というご質問です。考えてみたら世間の写真サイト様は普通、自己紹介などの場所に「カメラは○○を使用」などと書かれているわけです。私が書いていなかった一番の理由は、実はカメラというメカ自体には全く興味がなく、もちろん全然詳しくもなく、もしかしたら(しなくても)苦手かも…というタイプの人間だからです。その証拠(?)に、私が使っているカメラをご紹介すると、

2001年12月~2003年8月までは、SONY Cyber-shot DSC-P30(130万画素)
2003年8月~2005年12月現在までは、FUJIFILM FinePix S5000(310万画素)

*2006年3月からはFUJIFILM FinePix S9000、2007年1月からは初のデジタル一眼レフカメラ、
SONY DSLR-A100を使っています。


…どどーーん。というわけで、カメラをわかる方にもわからない方にも、これをご覧になった瞬間に、私がいかにカメラに無頓着か、ということが明白になったと思われます。「えー、今時たったの310万画素!」とビックリされる方も多いわけですが(サイバーショットに至ってはリンクがあったことさえ驚きですが)、カメラに無頓着なことに加え、イジョーに非力なもので(左手握力16です。関係ないか)、何よりも「小さくて軽い」ことを重視して今に至っています。

ただし、こんなロウテクで小さくて軽いカメラだったからこそ、どこへ行くにも持参できて、死ぬほどたくさんの写真を撮ることができました。と同時に、カメラを徹底的に使い倒すことによって、「撮りたい写真を撮るためにはどうしたらいいか」の基礎を、自然と身体で覚えることができました。

来年の夏、いよいよ日本へ帰ります。私の長いNY生活を振り返ると、デジカメで写真を撮った日々はほんの一部でしかありません。でも、テロ後の私を元気づけてくれたのは、他ならぬこのデジカメと、NYという素晴らしい被写体、そして何よりもここ『CRYSTAL』にその写真を見に来て励ましてくださったたくさんの方達でした。

NYを去るにあたって、『CRYSTAL』の写真を気に入って来てくださっていた方達に感謝の意を込めて、メカに弱い私でも使える、カメラ使い倒しの経験によって得た知識を、そっくりそのままご紹介しようと思い立ちました。言わば、「素人の、素人による、素人のためのデジカメ講座」というわけです。デジカメの普及には目を見張るものがある昨今、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。


Ground Zero as of September 11, 2005